医療従事者ミヤタの病気紹介ブログ

医学を学んでいる私が自らの勉学も兼ねて医療関係者以外の方にも分かりやすい様に話題の病気を紹介するブログ

O-157の後遺症、溶血性尿毒症症候群<HUS>とはどのような病気か

こんばんは。先日、堺市の25歳の女性が亡くなったとニュースになりました。小学生時に感染した腸管出血性大腸菌O-157の後遺症である溶血性尿毒症症候群<HUS>の腎性高血圧を原因とした脳出血が死因のようです。では溶血性尿毒症症候群とはどのような病気なのでしょうか。

溶血性尿毒症症候群の原因は腸管出血性大腸菌(特にO-157)が産生するVero(ベロ)毒素が主な原因とされています。腸管出血性大腸菌に感染後3~5日に急性胃腸炎として水溶性の下痢と激しい腹痛、粘血便が出るなどの症状が起こります。その3~7日後に1~10%の患者が①急激に腎臓の機能が低下する急性腎不全、②血液中の赤血球が破壊される溶血性貧血、③出血を止める働きをする血小板が減ってしまう血小板減少、を3徴とする溶血性尿毒症症候群と診断されます。今回の女性は腎臓の機能が悪くなって血圧を下げることができなくなってしまったのです。

溶血性尿毒症症候群にならないために腸管出血性大腸菌O-157の感染を予防することが大切ではないかと思います。感染源としては家畜、特に牛です。なので生肉はなるべく避け、加熱を十分にすることが必要でしょう。患者は子供や高齢者に多いのでこれらの方々は特に注意するべきです。

今回集団食中毒によりHUSに罹患された女性は亡くなってしまいました。食中毒になった方の中に慢性腎炎などで現在も治療や経過観察が必要な状態の方もいらっしゃいます。女性にはご冥福をお祈り申し上げ、現在治療中の方々の早い回復をお祈りします。