医療従事者ミヤタの病気紹介ブログ

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前田健さんが亡くなった虚血性心不全の原因や、なりやすい人とは?

こんにちは。2016年4月26日未明に芸人の前田健さんが虚血性心疾患(虚血性心不全)でお亡くなりになりました。この虚血性心疾患とはどのような病気で、どうすれば予防することができるのでしょうか。

心臓を栄養する血管は冠動脈とよばれ、左冠動脈と右冠動脈があり、大動脈という血管から枝分かれし、出てきています。その血流量は心臓から送り出される血液の5%を占め、心臓のポンプ機能を支えています。冠動脈が何らかの原因で狭くなったり、詰まってしまうと、組織が必要としているだけの血液を受け取ることができず、組織が酸素不足となってしまいます。組織が酸素不足になることを虚血といい、それによって心臓の筋肉が虚血に陥ることを虚血性心疾患といいます。虚血性心疾患は主に狭心症心筋梗塞のことを指します。狭心症には労作性狭心症、異型(冠攣縮性)狭心症、不安定狭心症の3種類があります。

労作性狭心症は動脈硬化などで血管の壁が硬くなり、狭くなることで起こります。症状は、体を動かすと胸やみぞおち等の辺りに絞めつけられる感じや圧迫される感覚や痛みが3~5分間程度持続します。ときに顎や歯、首、左肩や左腕にかけて痛みが放散することもあります。

異型狭心症は夜間~早朝、安静にしている時に胸の痛みを数分~15分程度生じます。リラックスに係わる神経である副交感神経が働いている時に冠動脈が狭くなって起こるといわれています。

不安定狭心症は、アテロームプラークと呼ばれる脂肪などの塊が血管の内側にでき、それが破綻することによって血栓と呼ばれる血の塊ができます。それらが血管に沈着することにより、血管が細くなって起こります。症状は動いている時、安静にしている時を問わず、数分~20分程度胸の痛みが生じます。顎や歯、首、左肩や左腕、みぞおちにかけて痛みが放散することもあります。労作性狭心症の症状が進み、不安定狭心症となりこともあります。不安定狭心症心筋梗塞に移行したり、突然死に至る可能性があります。

心筋梗塞は冠動脈の血の流れがの急激に減ることによって心臓の筋肉が壊死して起こります。症状は安静にしていても20分以上継続する激しい胸の痛み、冷汗、吐き気や嘔吐などがあります。ここで気を付けなければいけないのは、症状は胸だけではなく、みぞおちや背中などが痛む場合もあることです。また、高齢者や糖尿病患者では胸痛が全くない場合もあります。

虚血性心疾患の最大の原因は血管が硬くなってしまう、動脈硬化です。高血圧、脂質異常症(高脂血症)、糖尿病、喫煙が動脈硬化の主な危険因子です。その他の、コントロールができない原因として、加齢、性別(男性の方が女性より起こりやすい)、遺伝があります。また、コントロールができる原因として、肥満(特に内臓脂肪型)、運動不足、ストレスなどがあります。

虚血性心疾患による突然死を予防するには、やはり異変を感じたらすぐに病院に行くことです。初めは痛む時間が短く、自然に治っていても、病気が進行して突然死を引き起こす病態にまで悪化する可能性もあります。注意したいのは、虚血性心疾患によって痛むのは胸だけではなく、肩や背中などの場合などもあるということです。また、食事内容の改善や運動、禁煙など、ライフスタイルを改善することも重要な予防方法となります。

今回亡くなられた前田健さんのご冥福をお祈りします。