医療従事者ミヤタの病気紹介ブログ

医学を学んでいる私が自らの勉学も兼ねて医療関係者以外の方にも分かりやすい様に話題の病気を紹介するブログ

いっこく堂さんを襲ったクモ膜下出血とは危険な病気なのか

今日はクモ膜下出血についてお話します。

腹話術師のいっこく堂さんが自宅で転倒し外傷性のくも膜下出血で入院されたと話題になっています。外傷性クモ膜下出血、そもそもクモ膜下出血とはいったいどのような病気なのでしょうか。

人間の脳と脊髄は皮膚、骨で覆われ、さらに髄膜と呼ばれる3層の膜によって包まれています。髄膜は外側から順に硬膜、クモ膜、軟膜から成り立っています。クモ膜と軟膜の間にある空間はクモ膜下腔といわれます。まとめると人間の頭は外側から「皮膚→頭蓋骨→硬膜→クモ膜→クモ膜下腔→軟膜→脳」となっています。クモ膜下出血は、何らかの原因によりクモ膜下腔に存在する血管が破れてしまうことにより起こります。つまり外傷性クモ膜下出血とは頭を打つなど外傷が原因でクモ膜下腔に出血が起こった状態のことです。

クモ膜下出血は40~60歳代に多く、男性よりも女性に起こりやすいです。喫煙や高血圧で起こりやすくなります。クモ膜下出血の原因の約80%は脳動脈瘤と呼ばれる血管にできたコブのようなもの破裂です。

クモ膜下出血が起こると、バットで殴られたような、これまで経験したことのない激しい痛みが突然起こります。痛みは激しくない場合もありますが、頭痛が「突然」出始めるということが重要です。また頭痛に付随して吐気や嘔吐、意識を失うこともあります。激しい痛みが出る前に比較的軽度な頭痛が突然起こる場合もあります。この頭痛は警告頭痛といわれます。

治療は重症度、年齢、合併症の有無などを総合的に判断して決定されますが、手術ができる場合は緊急手術を行うことになります。外傷性クモ膜下出血の場合は手術を行わず、安静にして経過を見ることが多いです。

クモ膜下出血は一般に、社会復帰できる患者、重度後遺症を残す患者、死亡する患者の割合がおよそ1/3ずつになる(1/3ルール)といわれるほど大変な病気です。突然頭痛が起こったときは軽度であっても警告頭痛の可能性もありますので早く病院に行き検査を受けることが大事です。また、定期的に脳ドックなどを受け脳血管の異常がないかを調べておき、もしも異常が見つかった場合はクモ膜下出血など重篤な状態になる前に予防をすることが大切です。