医療従事者ミヤタの病気紹介ブログ

医学を学んでいる私が自らの勉学も兼ねて医療関係者以外の方にも分かりやすい様に話題の病気を紹介するブログ

熊本地震で犠牲者が出ているエコノミークラス症候群が発生する原因や予防法は?

こんばんは。4月14日に熊本で発生した地震の影響で避難されている方が多くいらっしゃいます。現在も余震が続いており、避難中にエコノミークラス症候群で亡くなられる方もおられます。このエコノミークラス症候群とはどのような病気でどういった予防法があるのでしょうか。

飛行機のエコノミークラスで旅行し、長時間狭い椅子に座ったまま動かない状態でいると足の血液の流れが悪くなり、静脈の中に血栓(けっせん)という血の塊ができることがあります。この血栓歩行などをきっかけに足の血管から離れ、血液の流れに乗って肺へと到達し、肺の動脈を詰まらせてしまいます。これがエコノミークラス症候群です。静脈に血栓ができることを深部静脈血栓症、静脈で発生した血栓が肺の動脈を詰まらせることを肺血栓塞栓(そくせん)症などといいます。

静脈に血栓ができる原因はエコノミークラスで移動することだけではありません。熊本の、車内に避難されている方々のように長時間同じ体勢でいると、血流が停滞し、血栓ができやすい状態になります。他に血流が停滞する原因には長期間寝たきりでいたり、長時間座ったままの姿勢でいることや、妊娠、脱水などがあります。経口避妊薬(ピル)を飲んでいると血が固まりやすくなり、血栓ができやすくなることもあります。医療現場では長時間の手術の後や、長期間の入院で寝たきりになっている場合に血栓が発生しやすく、リハビリなどに向かう最初の一歩目に肺の血管に血栓が飛んでいき詰まることがあります。血栓が肺の血管に詰まると呼吸困難や胸の痛みなどが起こります。呼吸が出来なくなり、死に至る場合もあります。

深部静脈血栓症の治療は血をサラサラにする薬や血栓を溶かす薬や手術によって行います。また、肺血栓塞栓症の治療は、酸素を投与するなど呼吸ができる状態にし、深部静脈血栓症の治療と同じく、血をサラサラにする薬や血栓を溶かす薬を飲んだり点滴を行うことにより行います。重症の場合は血栓を取り除く手術を行います。

血栓の発生を予防するには水分摂取を行うことや、足を動かすなどの運動を行うことです。熊本地震被災されている状況で物資も不足して十分な水分補給は難しいかとは思いますが、車内や避難所などで同じ姿勢を取り続けずにこまめにストレッチを行うなど可能な限り予防をしていただきたいと思います。