医療従事者ミヤタの病気紹介ブログ

医学を学んでいる私が自らの勉学も兼ねて医療関係者以外の方にも分かりやすい様に話題の病気を紹介するブログ

西田敏行さんが手術した胆のう炎は石が原因で起こる病気

こんにちは。俳優の西田敏行さんが胆嚢炎(以下、胆のう炎)で胆のう摘出術を受けられたようです。この胆のう炎とはどのような病気なのでしょうか。

 胆のうは肝臓で産生される胆汁(たんじゅう)という消化液を貯蔵・濃縮する器官です。胆のう炎は、胆のうに胆石という石が挟まることで起こります。石が挟まると胆のうに胆汁が溜ります。すると、胆のうの内圧が上がることで、また、胆汁そのものによって粘膜が障害されます。そして胆のうに細菌が感染し、炎症が起こり、胆のう炎となります。

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 日本では成人全体の約10%が胆石を保有しているといわれています。男性より女性に多く(男女比1:1.5)、40歳以上で頻度が上昇します。特に肥満体型、多産の女性、白人に多いです。

胆のう炎が重症化すると、胆のうに穴が開いたり、胆のうを越えてお腹の中に炎症が波及する腹膜炎になることがあります。胆のう炎の治療としては、体の外からチューブを入れて胆汁を吸引する「胆のうドレナージ」や、今回西田さんが受けられたような腹腔鏡で胆のうを取ってしまう「腹腔鏡下胆のう摘出術」があります。

玉置浩二さんが緊急入院した大腸憩室炎は文字通り大腸にできた”部屋”に炎症が起こる病気

こんにちは。歌手の玉置浩二さんが大腸の憩室炎により緊急入院したと話題になっています。この憩室炎とはどのような病気なのでしょうか。

まず、憩室は「けいしつ」と読み、大腸などの管のような形をしている消化管の壁に文字通り部屋のようなものができます。憩室は、炎症などにより消化管の壁が引っ張られたり(牽引性)、消化管の内側から圧力がかかって壁が押し出される(圧出性)ことによって出来ます。生まれつき憩室があることもあります(これをMeckel憩室といいます)。憩室はあるだけでは無症状のことが多いですが、憩室が多発したり、炎症・出血を起こしたりすることで様々な症状が現れます。憩室に炎症が起こると憩室炎と呼ばれる状態になります。憩室ができる頻度は場所によって異なり、大腸憩室>十二指腸憩室>Meckel憩室となっています。玉置さんは以前から大腸にできていた憩室に炎症が起きたといわれています。

大腸憩室炎は、憩室の中が糞便などで満たされ、内部で細菌が増殖することで憩室の周囲に炎症が生じ起こります。中年~高齢者、普段から便秘気味の人がなりやすいです。典型的な症状として、腹痛、圧痛(押すと痛む)、軽度の発熱が見られます。ほとんどの場合が軽症で、抗菌薬や絶食などによって軽快します。しかし、化膿したり、消化管に穴いたりする重症例では、緊急手術で治療することになります。治療後も、約25%の人に再発が見られるため、再発防止のために高繊維食と便通のコントロールをすることが大切になります。

今回玉置浩二さんは、入院し抗菌薬と食事制限、安静によって治療されているということで、おそらく命に別状はない軽症だったのではないかと思われます。早く復帰していただきまた歌声を聴かせていただきたいですね。

前田健さんが亡くなった虚血性心不全の原因や、なりやすい人とは?

こんにちは。2016年4月26日未明に芸人の前田健さんが虚血性心疾患(虚血性心不全)でお亡くなりになりました。この虚血性心疾患とはどのような病気で、どうすれば予防することができるのでしょうか。

心臓を栄養する血管は冠動脈とよばれ、左冠動脈と右冠動脈があり、大動脈という血管から枝分かれし、出てきています。その血流量は心臓から送り出される血液の5%を占め、心臓のポンプ機能を支えています。冠動脈が何らかの原因で狭くなったり、詰まってしまうと、組織が必要としているだけの血液を受け取ることができず、組織が酸素不足となってしまいます。組織が酸素不足になることを虚血といい、それによって心臓の筋肉が虚血に陥ることを虚血性心疾患といいます。虚血性心疾患は主に狭心症心筋梗塞のことを指します。狭心症には労作性狭心症、異型(冠攣縮性)狭心症、不安定狭心症の3種類があります。

労作性狭心症は動脈硬化などで血管の壁が硬くなり、狭くなることで起こります。症状は、体を動かすと胸やみぞおち等の辺りに絞めつけられる感じや圧迫される感覚や痛みが3~5分間程度持続します。ときに顎や歯、首、左肩や左腕にかけて痛みが放散することもあります。

異型狭心症は夜間~早朝、安静にしている時に胸の痛みを数分~15分程度生じます。リラックスに係わる神経である副交感神経が働いている時に冠動脈が狭くなって起こるといわれています。

不安定狭心症は、アテロームプラークと呼ばれる脂肪などの塊が血管の内側にでき、それが破綻することによって血栓と呼ばれる血の塊ができます。それらが血管に沈着することにより、血管が細くなって起こります。症状は動いている時、安静にしている時を問わず、数分~20分程度胸の痛みが生じます。顎や歯、首、左肩や左腕、みぞおちにかけて痛みが放散することもあります。労作性狭心症の症状が進み、不安定狭心症となりこともあります。不安定狭心症心筋梗塞に移行したり、突然死に至る可能性があります。

心筋梗塞は冠動脈の血の流れがの急激に減ることによって心臓の筋肉が壊死して起こります。症状は安静にしていても20分以上継続する激しい胸の痛み、冷汗、吐き気や嘔吐などがあります。ここで気を付けなければいけないのは、症状は胸だけではなく、みぞおちや背中などが痛む場合もあることです。また、高齢者や糖尿病患者では胸痛が全くない場合もあります。

虚血性心疾患の最大の原因は血管が硬くなってしまう、動脈硬化です。高血圧、脂質異常症(高脂血症)、糖尿病、喫煙が動脈硬化の主な危険因子です。その他の、コントロールができない原因として、加齢、性別(男性の方が女性より起こりやすい)、遺伝があります。また、コントロールができる原因として、肥満(特に内臓脂肪型)、運動不足、ストレスなどがあります。

虚血性心疾患による突然死を予防するには、やはり異変を感じたらすぐに病院に行くことです。初めは痛む時間が短く、自然に治っていても、病気が進行して突然死を引き起こす病態にまで悪化する可能性もあります。注意したいのは、虚血性心疾患によって痛むのは胸だけではなく、肩や背中などの場合などもあるということです。また、食事内容の改善や運動、禁煙など、ライフスタイルを改善することも重要な予防方法となります。

今回亡くなられた前田健さんのご冥福をお祈りします。

熊本地震で犠牲者が出ているエコノミークラス症候群が発生する原因や予防法は?

こんばんは。4月14日に熊本で発生した地震の影響で避難されている方が多くいらっしゃいます。現在も余震が続いており、避難中にエコノミークラス症候群で亡くなられる方もおられます。このエコノミークラス症候群とはどのような病気でどういった予防法があるのでしょうか。

飛行機のエコノミークラスで旅行し、長時間狭い椅子に座ったまま動かない状態でいると足の血液の流れが悪くなり、静脈の中に血栓(けっせん)という血の塊ができることがあります。この血栓歩行などをきっかけに足の血管から離れ、血液の流れに乗って肺へと到達し、肺の動脈を詰まらせてしまいます。これがエコノミークラス症候群です。静脈に血栓ができることを深部静脈血栓症、静脈で発生した血栓が肺の動脈を詰まらせることを肺血栓塞栓(そくせん)症などといいます。

静脈に血栓ができる原因はエコノミークラスで移動することだけではありません。熊本の、車内に避難されている方々のように長時間同じ体勢でいると、血流が停滞し、血栓ができやすい状態になります。他に血流が停滞する原因には長期間寝たきりでいたり、長時間座ったままの姿勢でいることや、妊娠、脱水などがあります。経口避妊薬(ピル)を飲んでいると血が固まりやすくなり、血栓ができやすくなることもあります。医療現場では長時間の手術の後や、長期間の入院で寝たきりになっている場合に血栓が発生しやすく、リハビリなどに向かう最初の一歩目に肺の血管に血栓が飛んでいき詰まることがあります。血栓が肺の血管に詰まると呼吸困難や胸の痛みなどが起こります。呼吸が出来なくなり、死に至る場合もあります。

深部静脈血栓症の治療は血をサラサラにする薬や血栓を溶かす薬や手術によって行います。また、肺血栓塞栓症の治療は、酸素を投与するなど呼吸ができる状態にし、深部静脈血栓症の治療と同じく、血をサラサラにする薬や血栓を溶かす薬を飲んだり点滴を行うことにより行います。重症の場合は血栓を取り除く手術を行います。

血栓の発生を予防するには水分摂取を行うことや、足を動かすなどの運動を行うことです。熊本地震被災されている状況で物資も不足して十分な水分補給は難しいかとは思いますが、車内や避難所などで同じ姿勢を取り続けずにこまめにストレッチを行うなど可能な限り予防をしていただきたいと思います。

徳永英明さんのもやもや病は日本人が発見した日本人に多い病気

徳永英明さんがもやもや病から復帰後初めてイベントを行ったと話題になっています。この聞きなれない病名もやもや病とはどのような病気なのでしょうか。

脳に栄養を送る内頚動脈という太い動脈が徐々に細くなり詰まっていき脳への血流が不足し、その不足した血液を補うように周りから細い血管が発達する病気です。血管が詰まる原因は分かっていません。この病気は日本人により発見され、発達した血管が「もやもや」した煙草の煙の様に見えることから、「もやもや病」の名前がつけられました。ちなみにこのもやもや病は英語名でmoyamoya diseaseといいます。このもやもや血管では脳血流が不十分であるため、脳に行く血が足りなくなったり、もやもや血管は脆弱であるため破綻しやすく脳出血が生じたりします。

もやもや病は10歳以下の小児や、30~40歳代の成人に好発します。小児では熱い麺類をふーふー吹き冷ました時、フルートなど楽器を演奏した時、激しく泣くなどの後、一過性の脱力や片麻痺、けいれん、意識障害などが起こります。成人では約半数が脳出血で発症します。残りは小児の場合と同じような症状です。脳出血の症状は、意識障害や頭痛、麻痺などで、緊急に治療が必要となります。

脳の血流の不足を解消するために手術による治療を行います。詰まった太い血管の血流を回復させる治療法はありません。また、脳の血流は低下していても、頭蓋骨の外側で頭皮の下の血流は良好に保たれています。ここを走行する血管を浅側頭動脈といいます。そこで、頭蓋骨を開け、脳の表面の中大脳動脈と呼ばれる血管の末梢に頭蓋骨の外側からその浅側頭動脈をつなげて血流を増やし、もやもや血管の負担を軽減させる手術を行います。成人のもやもや病の場合再出血をきたしやすいので、一度手術をした後も血管に負担をかけないような生活を心掛けることが必要でしょう。

熊本地震など、災害現場で行われるトリアージとは何か

 

こんばんは。昨夜熊本県で大規模な地震が起こり、被害が出ています。けが人が続々と運び込まれた病院では、地震の影響で万全の態勢をとれないまま、懸命の対応が続いたようです。ニュースでは現地や病院でトリアージが行われていると報道されていました。この、被災地で行われるトリアージとは一体どういったものなのでしょうか。

人材と資材が圧倒的に制約される集団災害の現場において、多数の傷病者を短時間に重症度、緊急度、病院の医療能力などから判断・分類し、誰を優先的に搬送や治療するかを決定することをトリアージといいます。トリアージtriageはフランス語の(コーヒー豆を)選別するという語が由来の様です。傷病者の重症度を選別した後、傷病者にトリアージタッグと呼ばれる識別票を付けていきます。タッグの色は4種類あり、の順に重症となります。具体的には、緑は歩行が可能であり軽症で搬送が必要のない人、黄と赤は歩行が不可能であり、その中でも黄は生命が脅かされるほど重症ではないが搬送が必要な人、赤は生命を脅かされる重篤な状態で、救命の可能性がある人となっています。黒は亡くなってしまった人やその状況では救命が難しいと判断された人に付けられます。搬送される順番は、の順になります。当然トリアージの色は現地の状況などにより変わることがあります。

熊本では高齢者が多く入院する病院で、停電や給水タンクの破損で患者の転院を余儀なくされ、看護師や自衛隊員らが手を引き、寝たきりや車いすの患者さん約180人を車に分乗させ、約8キロ離れた県立高校体育館まで一時搬送したという事例もあるようです。今回の地震で被害にあわれた方の無事を願いますし、一刻も早い復興をお祈り申し上げます。

柴田理恵さんが手術した白内障は歳を取ると誰もがなる病気

こんばんは。今日は誰もが年を取ることによってなることがある白内障について説明します。まず、横から見た眼球の絵を、大分簡略化して書いてみました。

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眼から入った情報は矢印のように進んでいき神経を伝って脳へと伝達され、物が見えるということになります。進路の途中、赤で書いた水晶体という透明な凸レンズを通ります。水晶体は初めは透明なのですが、年を取るにつれて白く濁ってきてしまいます。その濁りが高度になり見えにくくなった状態を白内障と呼びます。

白内障の症状には視力の低下、光がまぶしく感じる、目の前に霧のかかったような視界になる、などがあります。水晶体が濁るのは、加齢以外にも遺伝、ダウン症、糖尿病、アトピー性皮膚炎、ステロイドの他、様々な原因があります。加齢が原因の場合50~60歳以上で見られます。

白内障の治療は手術が第一選択です。濁った水晶体を超音波によって細かく砕いた後、それらを吸い取って取り除きます。そして水晶体の代わりに眼の中に人工的なレンズを入れて手術は終了です。麻酔は全身麻酔ではなく目の中の局所的な麻酔のみで、早くて10分ほどで終わる手術です。病院によりますが、最近は日帰り手術も出来ます。ちなみに眼科医が最初にマスターする手術はこの白内障手術です。

手術を受けられた患者さんの話を聞くと本当によく見えるようになるようです。目の見えにくさを感じだしたら早めに眼科を受診され、手術を検討してみてもよいかもしれませんね。